新領域創出に向けた取り組み

Q:現在の取り組みについて教えてください

現在は、お客さまのDX推進をご支援するコンサルティングチームでの業務と、当社がパートナー企業として参画している社団法人の運営支援との2軸で活動を行っています。
社団法人の運営支援活動では、社会や地域課題に根差した事業創造プログラムの企画やデリバリーをはじめ、各地域のステークホルダー(自治体、学術企画、スタートアップ支援機関)と協働しながら、未来のアントレプレナー(起業家)向けに様々な事業創造支援を行っています。
これらの活動が当社の長期的なポートフォリオシフト戦略に掲げられている、社会課題起点ビジネスの領域に取り組むための制度設計に連動できればと考えており、そのノウハウや経験値を積んでいます。

Q:社会的価値を軸としたビジネスを創出することの難しさを教えてください。

昨今の企業経営においては、世界的な社会課題の解決やESGへの対応が益々重視されるようになってきています。つまり、企業は従来からの財務的な経済的価値に加え、事業を通じて社会課題を解決する社会的価値の両立を目指す必要性がでてきました。
しかし、こういった考え方はマイケル・ポーター教授が2011年にハーバード・ビジネス・レビューでCSV(共有価値創造)という概念で提唱しており、決して目新しいものではありません。
一方で、私個人の感覚としては、CSV経営を体現できている企業はまだまだ一握りしかおらず、たとえ方針として掲げていても、いわゆる「CSVウオッシュ」に陥ってしまうケースが多いのではないかと思います。
これには様々な理由が考えられますが、まだまだ多くの企業が短期的な利益を追求することに重点をおいていることが特に大きな要因ではないかと思います。
顧客のニーズ(商機)が起点とされ創出される経済的価値に対して、社会的価値は社会課題(ペイン)が起点となり解決までの道のりもきわめて長く、何を持って成果・成功するかの評価も難しい領域です。
そのため、社会課題起点ビジネス創出の難しさの本質は、こういった自社視点、短期的な利益追求視点といった企業全体の意識、文化の変革にあると考えています。

Q:上記実現のために、必要となる考え方やマインドを教えてください

私は、ビジネスの本質である「顧客への価値提供」というベースを押さえたうえで、この先5年後、10年後、30年後に、企業にとって、顧客が誰であるかと考えていけば、自ずと社会環境全体へとスコープが広がり、解決すべきは今日までに経済的価値では解決されずに取り残されてしまっている社会課題に行き着くはずだと考えています。
先ほどもお話したように、こういった意識、文化の変革に向けて、社会的価値が持ちうるインパクトについて、多くの同志を募り動き出す第一歩がとても重要であり、それを挫けずにやり抜くというマインドが何よりも必要になると考えています。そしてその同志たちとともに、対峙する課題に共鳴出来るかどうかが非常に重要だと思っています。
私自身が社会課題・地域課題といったものにグッと引き込まれたのは、現在活動支援を行っている社団法人の事業創造プログラムにメンバーとて参加したことがきっかけでした。
函館市内の事業者と学生さんのペインを解決するというテーマを起案したのですが、現地の方々の話を聞けば聞くほどに課題は尽きず深刻でした。このままでは、函館という都市が消滅してしまうと住人達が危機感を露わにし、そこに共感した学生さんが、将来エンジニアとして活動するため函館に移住し懸命にスキルを磨く姿をみて、これは他人事として見過ごしてはいけないと感じました。
この出逢いや様々な気づきが私にとっても大きな転換期となりましたし、現在の社会課題起点ビジネス創出へのマインドやモチベーションのルーツにもなっています。
皆さんも、日々生活をしている中で時折り小さな違和感を持つ瞬間があると思います。例えば、誰かの話を聞いたりニュースをみたりした時に、「このままでいいのか?」「そもそも何故こうなっているのか?」といったことです。そういった頭から離れないトピックスを見過ごさず、スルーせずに、実態を調べてみたり、周囲と対話をする一歩が非常に重要ではないかと考えます。
そして、結果的にそういったことの積み重ねが、気づいたら自分の中のコアな関心事として形成されており、何かしらの行動につながり、マインドがさらに醸成され周囲を巻き込み、大きな変革を生むことになるのだと思っています。

Q:上記実現のために、現段階で心がけていることを教えてください

日頃から、できるだけアウトプットすることを心がけています。
アウトプットと言っても、いきなり格好いい成果物を作ることではなく、まずは周囲に自分の考えや思いをぶつけてみることです。
これは、まだまだ成熟されていない考えや思いである段階ほどに効果的で、対話相手から違った切り口で新たな問題提起やヒントを得ることが出来たりします。また関連した情報や詳しい知人を紹介してくれたりと、手持ちのカードがどんどん溜まっていき、気づくと進めたいと思う事が一気に加速していきます。そして何より、その過程で新しい同志、仲間が増えていきます。
加えて、時には少し客観的に自分の考えや活動を見つめ直すことも心がけています。自分へ問い直し、少しでも違和感があればまた軌道修正し、自分の言葉でしっかりと価値を語れる状態に至っているかをひたすらに繰り返す作業となりますが、これは最低限かつ最大限重要な営みであると感じています。

Q:今後の展望を教えてください

2023年度は本当にうれしいことに、「社会課題ビジネス創出を担う人材」の開発を主眼とした越境プログラムが社内で3つ企画されました。
手上げ式でしたが、どのプログラムも早期に満員になったと聞いています。これまでは、社内でどうすれば同志が見つかるかと手探りだった面もあったのですが、この公募をきっかけに出会うことが出来た新しい仲間が続々と増えています。
今後の展望としてはまず、当社が社会課題起点ビジネスの事業を立ち上げたときに、どんな未来が描けるのか、どんな変化が起こるのかといったビックピクチャーを仲間とともに考えていきたいです。そして、そこに接続できるスモールサクセスをスピード感を持って創出していきたいと考えています。
そのためにも活動に対して賛同するメンバーを社内外からさらに募っていき、少しずつ着実に、新たな価値を産み出し続けていくような環境、文化を整備していきたいです。
そして将来的には、全国津々浦々で当社に関心を持ち、応援してくれる方々が存在し、多様なバックグラウンドを持つ人々が共に事業創造を行う志を同じくする仲間となっている。そんな日が来ることを夢見て引き続き奮闘していきたいと思います。